* 「塔の旋律」 作 : 姫沙羅桐珠 様


クロスは塔にいた
何年も何年も。
時を止めてしまったその身体では
成長することもなく
ただ漠然と時が過ぎていくだけ。
たまに「声」を聞きわける
訪問者と共に過ごす以外
彼に変化は訪れなかった。

ラスは塔にいた。
ゆっくりと風のそよぎを聞きながら。
タイムやまだ会ったことのない妹
たまに「タリスマン」をくれた友
そんな人々を想いつつ一人たたずんでいた。
魔法が存在しない変化のありすぎる世界
彼は何か疲れを感じていた。

ある日クロスに変化が訪れる。
永年聞きなれた静寂がやぶられた。
誰かの声が聞こえる。
内なる叫びが。
哀しき声音が。
その叫びは
彼を充分におどろかせた。

ある日ラスに変化が訪れる。
闇の声が聞こえるようになる。
静寂の中の
闇の叫びが。
哀しき悲鳴が。
誰の声かはわからなかったが
彼は静かに受け入れた。

違う世界の時の中で
結びついた二つの旋律。

静寂の音が
静かに
ただ静かに
二人の時を過ぎて行った。


fin



姫沙羅桐珠様から頂きました、ラッセルとクロスのお話です。
吟遊詩人が詠う詩のような運びに、優しく寂しい感じのするストーリー。
交わることは無いけれど、いつか何かが交わっていたかのような互いの物語。
全く違う筈の記憶さえ、どこか似ていたのかもしれない。そんな風に思いました。(^-^)
素敵なSS作品をありがとうございました。

2004年10月6日 : 中原 良