* 「What important is.」 作 : 道行マリル 様


 びゅううぅぅぅ・・・
風が鳴き声をあげる。
 ざああぁぁぁ・・・
その風に流され草木が音を立てる。
忌々しい過去がよみがえる音。
思わず耳をふさぎたくなる。
でも、過去から逃げてたって始まらないんだよね。

強い向かい風が吹いてくる中、俺は前へ進み続けた。
背を向けてきた風の中を、今俺は、切り裂きながら前へ進む。
大丈夫。恐れることはない。
この風は自然のもの。人為的なものではないから。
殺意があるわけじゃない。
恐れる必要なんか・・・ないよね。

ある場所で俺は立ち止まる。
背の低い草がきれいに生え揃っている中。
規則正しく並んでいるのは石。
どの石にも名前が書いてある。
この石は・・・そう、墓石。
 びゅううううぅぅぅ・・・
さっきより高い場所に来たため、風が強くなっている。
横から吹き付ける風が、俺の髪を舞わせる。
俺の視界を少しふさぐ。
そんななか、俺は目的の墓石を探すために、歩き出す。

すぐにその墓石は見つかった。
名前がもう消えかかっている墓。
あんまり来る人がいないからかな?
管理されてないからかな?
まあ、この墓に来る人なんて、少ないに決まっているけど。
消えかかった名前。でも読める。
ディーリアス。
俺の名字。俺の父さんの名字。
その消えかかった墓に書かれた文字。
俺の父さんの・・・眠る場所。
俺はその前にしゃがみこむ。
そして、もってきておいた花束を置いた。

風の声と草木の声、俺の服のこすれる音。
そんな音しかしない中・・・
俺はゆっくり・・・口を開いた。

「父さん・・・今日は・・・お別れに来たんだ。」

もう二度と帰ってくることなんかないだろうから。
できないだろうから。

「今日・・・俺・・・このタリスマンの力を使って・・・別世界に行く。でも・・・タリスマンがもう限界だからさ・・・行ったらもう戻ってこれないだろうからさ・・・」

でも。

「この世界に未練なんかないよ。もう父さんに会えなくなるっていうのはつらいし、タイムにも・・・会えなくなっちゃうけど・・・でも・・・大切なものを・・・見つけたんだ。」

タイムに別れを告げに戻ってきたこの世界。
ここで俺は・・・その人に・・・出会った。

「その人は時属性の魔法の素質を持ってるんだけど・・・この世界の人じゃないんだ。本来なら、魔法なんか存在するわけのない世界の人なんだ。矛盾してるよね。魔法が存在するわけない世界なのに魔法の素質を持った人がいるってことが。・・・でも・・・俺には・・・」

そう、それは魔法を使えて当たり前の人ばかりの場所、ダリルでの、魔法を使えない俺。
おかしな存在の俺。
だからわかる。
あの人の気持ちが・・・
あの人に対する周りの目が・・・

そこで俺は一旦口を閉ざし、1ヶ月ぐらい前に近所(この世界じゃないよ。キョウトでの話だよ?)の子達(俺と同い年ぐらいね)と話したことを思い出す。
それはあの人・・・魔法が存在しない世界にもかかわらず魔法の素質を持つ人がいるってことを耳にした直後の話・・・

「なあ。もしこの世界に・・・魔法が使える人間がいたら・・・どう思う?」
「はぁ?いきなり何言ってんだ、ラス」
「ずいぶん唐突だね・・・」
それが本当にいるらしいとは言わなかったけど。
「まあ、ふと思ったことなんだけどさ。」
「でも、あんまりに現実離れしてて、考えられねぇ・・・」
現実離れって・・・これは本当なのに・・・
「じゃあ、たとえば、俺実は魔法使えますって言ったらどうする?」
「「えええぇぇぇ!!??」」
・・・そんなに驚かなくても。
その人がかわいそうになる。
「っていうか、魔法なんか使える奴なんかいるわけねぇだろ!!この世界に!!!」
「見たこともないし、そういう経歴があったわけじゃないしね。」
「存在を認めない?」
「まあ、そうだなぁ・・・正直、不気味だし。」
「近づきたくないよね。人間じゃないって感じ・・・かな」
・・・言いすぎだよ。
「待て待て、ラス。お前、本当に魔法使えますってオチはないよな。」
「・・・ははは、残念ながらさっきのは嘘だよ。俺は魔法は使えない。」
・・・タリスマンがあれば話は別だけど。
「だよなぁ〜」
「よかった。安心した。」
・・・なんでそこで安心するの?
本当に魔法が使えたら・・・お前たちは・・・俺を拒むの?
ニホンに興味を持った外人みたいなのりで来た俺を丁寧に迎えてくれたのに。
今だって普通に付き合っているのに。
本当は、この世界の人間ですらないのに。
特別な何か。異質な何か。
それに気づいたら・・・その人に対する価値観って・・・変わってしまうものなの?
今までそばにいても、離れていってしまうものなの?
疑問は頭に浮かぶけど・・・
それに対する答えは自分が一番知っている。
あの世界で周りの奴らが俺を見ていた目。
・・・重なる・・・
俺とその人が。
あの世界で俺を見る人の目と、この世界でその人を見る人の目が。
必死で隠し続けるその異質のもの。
そんなの・・・どうでもいいじゃないか・・・

そういう自分はタリスマンで時を越えている。
やっぱり、本当は魔法が使えないってことを隠すためなのかもしれないね。
あの世界では、それはおちこぼれみたいなものだから・・・

色々考えているうちに時はたって。
なんだかんだで集中教育にその人がでるってうわさを聞いて。
久々に戻ったその世界で、俺はその人に出会った。
やっぱり俺と重なる。

君は今までどんな思いですごしてきたの?
 君は今までどんなことを隠してきたの?
  君は今までどんなことを恐れてきたの?
   君は今までどんな目で見られてきたの?

ソノ コタエハ ジブンノ ナカニ アル
 ギモンハ アッテモ ソレヲ クチニスル ヒツヨウハ ナイ
  ダッテ コタエガ ワカッテイルコトヲ キイタッテ イミガナイ ジャナイカ

そう・・・

答えはわかっているのに、疑問は浮かんでくる。
何で疑問が浮かんでくるの?
答えがわかっても解決法がわからないから。救われないから。
何で救われないの?
だって運命だから。そういう風に生まれちゃったから。
そればっかりは変えられないから。

それを無理やり変えようとタリスマンを使ってみたけど、
それにだって限界が訪れようとしている。
友達にもらった大切なもの。
それが今・・・壊れようとしている。

だけど、俺は今・・・
大切ななにかに気がついた。
その人にあって、今一度、考え直すことができたから。

何かを無理やり変えようとするからだめなんだって。
時が止まってしまうんだって。
自分が生まれ持ったもの・・・
それを全力で活かしていくのが一番だって。
親からは残念ながら魔法の素質は引き継げなかったけど。

肉体はちゃんとここにある。
脳だってあるから、考えることもできる。
それに・・・

心があるから、思いに向かって走っていける。

俺は今一度、口を開いた。

「俺は、魔法は使えないけど・・・体はあるから、守りたいって思ったものは守って見せるよ。」

父さんみたいにね。

「だから・・・心配しないでよ。俺はやっと、俺らしい生き方ができそうなんだ。」

その人を守る。
それは、自分を守ることにつながる。
その人のために生きる。
それは、自分のために生きることにつながる。

「それを教えてくれた父さん・・・俺は・・・貴方の息子に生まれてよかったって、心のそこから思ったよ」

無意味な疑問に無意味な答えをしていたって始まらない。
逃げ続けたって、時は止まったまま。
それより大切な何かがあるんじゃないか?
それにたどり着くまでに時間がかかった・・・
でも。
間に合ったと、俺は思う。
手遅れだっていう奴もいるかもしれないけど。
過去を恨んだってしょうがないから。
今、それに気づいて、守りたいものを見つけて。

あの時止まってしまった・・・俺の時計。
ようやく、俺の時計はまた動き出したんだ。

「もう行くね・・・そろそろ集中教育の最後の授業が終わる時間だから。」

その人に、この思いを伝えたいから。

「じゃあね・・・父さん・・・」

さようなら

立ち上がり、後ろを向き歩き出す。
数メートル進んだところで、一旦立ち止まり、今一度後ろを見る。
そして。

 ざざざざざざっっっ・・・

俺は前を向いて走り出した。
今度こそ、後ろを振り向くことはなく。
追い風が俺の背中を押す。
まるで、先をせかすかのように。
前に進ませるかのように・・・

振り返っちゃいけない。
また過去の自分に戻る気がするから。

大切な何かに気づいたんだ。
ようやく気づいたんだ。
今までわからないフリをし続けていただけかもしれない。
過去の自分から逃げるために。
自分が過去に成し遂げることができなかったから。

でも

これから作っていけばいいんだよね。
過去を背負って、今を生きて。

未来でそれを守っていけばいいんだよね。

What important is…

…to protect someone you love most by your own power.

〜Fin〜

Written by Doukou-Maril
2004年4月7日




道行マリル様から頂きました、ラスがダリルを離れる直前のお話です。
寛大な心に宿った強い意志は、「守る」という言葉の代名詞。
きっと大切な何かを守る為に芽生えた心なんだろうなぁ、と思いました(^-^)
素敵なSS作品をありがとうございました。

2004年4月14日 : 中原 良